映画批評ではありません。「予告編批評」です。
予告編しか見ずに、あ〜だこ〜だと映画の話をしていきます。
今回のお題は、7月5日公開の『クライマーズ・ハイ』。横山秀夫の同名小説の映画化です。
1985年の日航機墜落事故を報道する地元の新聞記者たちの1週間の物語です。
映画では中心人物である地元紙のデスクを堤真一、社会部キャップを堺雅人が演じます。
堤真一は1964年生まれで今年44歳、堺雅人は1973年生まれで今年35歳です。
つまり、この映画は、35歳〜45歳ぐらいのちょうど働き盛りの年代を主人公にしていると言えましょう。
日航機事故が発生した1985年当時の35歳〜45歳というと、現在は58歳〜68歳になっています。
まだまだ健康で、お金も時間もある、といわれる年代です。
映画の主要なターゲットはこの層でしょう。
予告編もこの年代の心をくすぐるように作られているようです。
公式サイトで見ることができる本予告は1分51秒。
大きく分けて、前半は新聞記者たちの怒号が飛び交う緊迫感あふれる雰囲気、後半は元ちとせのバラード『蛍星』に乗せて人間ドラマを前面に押し出しています。
少し前の話になりますが、2006年にインターネットリサーチのインフォプラント社(現
ヤフーバリューインサイト社)が、1944年〜1949年生まれの1千人を対象に行った
アンケート調査があります。1944年〜1949年生まれというと、2008年現在で59歳〜64歳。映画のターゲットに重なります。
アンケート調査の結果によると、この世代が最も好きな映画ジャンルは、男性が1位アクション、2位SF、3位歴史・時代劇、4位サスペンス、5位ドキュメンタリー、女性が1位ヒューマンドラマ、2位サスペンス、3位恋愛、4位ドキュメンタリー、5位コメディ・喜劇でした。
男女とも5位以内に顔を出しているのが「ドキュメンタリー」と「サスペンス」です。
『クライマーズ・ハイ』の原作は週刊文春ミステリーベストテンで2003年の第1位を受賞しており、また、実際の事件を扱いドキュメンタリー性も備えています。
さらに、予告編の前半は「アクション」というほどではありませんが、新聞記者が激しくぶつかり合う動的な場面から構成されていますし、後半は女性が好む「ヒューマンドラマ」風です。
まさに、この世代の好みに全方位的に対応した予告編と言えましょう。
後半の「ヒューマンドラマ」部分の内容をつぶさに見ていくと、堤真一演じるデスクが息子らしき少年に責められる場面が目を引きます。
日航機墜落という一大スクープに入れこむ堤真一に対し、少年は涙声で、
「新聞だけが好きなんだ。だってそうじゃないか」という言葉を投げつけ、走り去っていきます。
会社人間として一心に働いたこの世代の男性には、家族に対して後ろめたい思いを持つ方も少なくないはずです。予告編の少年のセリフは、そこらへんをチクチク刺激してきます。
でも大丈夫。予告編では続けて、事故で亡くなった乗客の遺書が読み上げられます。
「パパは本当に残念だ。きっと助かるまい。子どもたちのことをよろしく頼む。どうか神様、助けてください」確かに会社人間だったかもしれないけど、最後に思うのは家族のこと。
この世代の男性の涙腺をジャストミートすること間違いなしの流れです。
そんな男性たちが定年退職後に戻るのは当然家族のところです。
先に引用したアンケート調査では、「今後大事にしたい時間は」との質問に6割以上の男性が「夫婦で過ごす時間」と答えました。
ところが、同じ質問に対し、女性の回答のトップは「旅行・レジャーを楽しむ時間」。
男女間の意識のこのギャップ。しょうがないことかもしれませんが、なんかサミシイですね・・・。(MTEA調査部)
関連サイト(予告編はこちらから)
・『クライマーズ・ハイ』公式サイト